地域ごとの規制はとんでもない考えか?
うまく機能し、使いやすいものは、存続するものになる傾向があります。理解しにくく、対処しにくいものは、不具合を起こしやすい傾向があり、遅かれ早かれ使われなくなるでしょう。
それゆえ、海運業のリーダーたちの大半が、特に海運業には少なくとも他のあらゆる業界と同じくらい多様な地域的および文化的な違いがあるにもかかわらず、世界的規制が唯一の選択肢だと信じているのは不思議なことです。
結局のところ、この業界が他とは違う単一の世界基準で活動しているなどとは、誰も本気で信じていません。
この話題に興味を持つとわかるでしょうが、世界基準を作ることには課題が伴います。最も苦労した事例を信じるならば、世界基準を公平に実施することは、ほぼ不可能です。
IMOにとって不運だったのは、戦後の世界的合意の崩壊と同時にパンデミックが起きたことですが、現在の地政学を一目見れば、分裂が不可避だったことがわかります。それは、世界貿易、技術および防衛における勢力均衡の変化によって確かめられました。
大量の場合に限って自由に貿易を行う世界では、大きな貿易圏が、ビジネスを行う対価としてできる限り高い環境基準を強制しようとすれば、否応なしにそうなるのは論理的に思えます。
だからといって、EUの排出量取引制度(ETS)における海運に関する案が、良い考えだというわけではありません。これまでに見られたように、世界的な制度が存在しない状態では、他の地域的枠組みと互換性のないETSは機能しないでしょう。
その場合、お金を最も必要とされるところへ回し、持続的に貢献できる方法で管理されるような地域基金があれば、おそらく欧州、米国またはアジアの船主たちは、喜んでお金を出し合うのではないでしょうか?
しかし、不公平な強制により、規制当局の善意にもかかわらず現実に二重基準がすでに存在しているような世界では、地域規制ハブでも、何もないよりはましでしょう。
この提案は、いくつかの理由から嫌われるでしょうが、私はすべて受け止めます。2層または3層の制度は、少なくとも商業利益をゆがめ、環境保護が間違いなく最も必要とされる場面で欠落するおそれがあります。また、経済発展、技術および能力開発にも影響があります。
ところが、世界的な規制が基本姿勢として与えられた世界は変化しており、間違いなく消滅するでしょう。一例を挙げると、輸送能力すなわち温室効果ガス排出量が、将来、急速に増加し続けるという一般的な見方は、脱炭素化と新型コロナウイルスによって様変わりしました。
たとえそうであれ、IMOが省エネ対策以上のことですぐに合意する見込みは、わずかしかありません。Marpol Annex VIを改正してIMO2020に変えるのに10年かかったことを忘れてはなりません。
これでは、脱炭素化の日程に比べて遅すぎます。EUとIMOの行動の速さの違いによって生じた規制の空白は、地域的な解決策が機能するかもしれないのに、業界が世界的な解決策を待つべきなのかどうかを問いかけます。
基準の作成を「先進国に主導させる」べきだという意見は、発展途上の国や地域を不公平に扱う意図として解釈されるべきではありませんが、十分に議論すべき問題があるときに、IMOのメンバーがいくらでも時間をかけることができるにもかかわらず、全員を満足させる成果を生み出せないという現実を反映しています。
非難の一部は、IMOの作業の影に隠れて不人気な規制やコストのかかる規制を遅らせようとする各国政府にも向けられるべきです。その中には発展途上国も含まれますが、宇宙にロケットを打ち上げている、つまりその気になれば必要な資源を喜んで投入できる国もあります。
私たちが生きる変化した世界には、環境パフォーマンスの改善を条件として資金調達手段を提供しようとする市場原理も含まれます。事業活動の低炭素化に向けて努力しないプレーヤーには資金調達手段を提供せずに市場から退出させるのは、そんなに悪いことでしょうか?EEXIは、結果的に似たようなことをしているのかもしれません。
最近の考えでは、新しいプレーヤーが新型コロナウイルス後の海運に参入して業界を揺るがす可能性さえ示唆されています。それはまだわかりませんが、先進国が規制を定め、発展途上国に移動できる資金を生み出すことさえ可能にする、よりスマートな資金調達方法を作ることができるでしょうか?
パンデミック以前ならば、海運業が最高レベル以外で力を合わせるという考えは、言い過ぎだったでしょう。現在では、グローバル海事フォーラムのメンバーを含む一部の船主は、進歩のために地域的解決策を共同で検討するときが来たと考えています。
そのような提言は、ほとんど異端に思われますが、現地で管理され、現地の条件に対応する地域制度とはどのようなものなのか、本当に現在の制度よりもずっと悪いのかどうかを明確にするのは、理にかなっているでしょう。