次に来るものは何か、なぜそれが重要なのか
船員交代問題の危機と、今後の正常化への不透明性については、終わりが見えない状況です。その一方で、海運業は千載一遇のチャンスを前にしています。
ちょうどテレワークの増加が今後10年以上にわたって何百万人もの人々の働き方を変えていくことになるのと同様に、海運業でもオートメーションとインテグレーションの時代が幕を開けようとしています。
とはいえ、乗組員をコンピュータに変えるべきだと主張したいわけではありません。この業界と人とのつながりは強固なものであり、非常に特殊な船舶を除けば、たとえ実現可能であることが証明されたとしても船舶から人を排除することは奨励されないでしょう。
現在変化しつつあるのは、より明確でもっと大量のデータを、さらに迅速に、人の手を介さずに乗組員と陸上勤務員が入手できるようにすることの必要性です。それと同時に、規制の遵守はさらなるオートメーションに役立つデータと手順を用いた検証プロセスへと急速に移行しつつあります。
下船できない乗組員がいる場合や、乗船できる乗組員が経験の少ない場合などは、さらに多くのプロセスをオンラインに移行させることが明確に必要となります。ソフトウェアやシステムを用いてこれが実現可能になれば、さらに透明性を増すことができるだけでなく、効率性も大幅に高めることができます。
近年、船舶から陸上に転送されるデータの量が急速に増えてきましたが、実際にはこのプロセスはまだ断片的であり、しばしば転送後に船上でデータパケットを組み立て直す必要があります。
これではエラーの可能性が高くなり、船員は航行の重要なポイントで必要なデータが得られないケースも出てきます。陸上勤務員にとっても、通過計画がわかっていて事前に承認されていたとしても、その船舶が同意された航路を守っているかどうか知ることができなかったり、そうでなくても、現在位置のアップデートや1日1回の燃料消費量が受信できないという問題は起こりえます。
これまで長い間、ブリッジ業務は明らかに肉体的なもので、これによって船員の役割も決められてきました。海運業や、ある意味船員までも、新しい技術の急激な変化から取り残されてきました。機械ができないことを船員が集中的にやるというのは、やはり理にかなったことであり、船員がすべきことはたくさんあったからです。
ニュース、気象条件、リスク管理、政治的イベントなど、たえまないデータの流れによって世界は変化してきましたが、海運業は10年以上も立ち遅れたままでした。新しく建造されたブリッジを見学する人は、古い技術と新しい技術が混在していることに驚かされることでしょう。これは、規制上の理由による面も少なくありません。
規制は、コネクティビティーを含む技術の採用にとって、主要な原動力となってきました。何かが最終決定を導くか、効率への貢献をしない限り、内部承認を得ることが難しいからです。一方で、船主と乗組員にとって規制は深刻なリスクとなる可能性もあります。データや情報が適正に収集・提示されないと、船舶が航行できなくなる可能性があるからです。
問題が起きると責任を問われるかもしれないという可能性が、知らず知らずのうちに乗組員を保守的にしてしまいます。より良い選択肢は、人間を記憶することの責任から解放し、データを収集して必要なときにそれを供給するようにソフトウェアをプログラミングすることでしょう。コンプライアンスに関しては、システムを利用して検査者がダッシュボードを眺められるようにし、緊急時以外は乗組員が操作する必要性をなくすことも可能なはずです。
オートメーションの傾向は加速していますが、まだ安全な移行段階は必要であり、特にデータが受信されて変更が加えられた場合は、その理解と認識が必要です。ブリッジ上の人間に知らせ、最新情報を伝えることで、人間が必要に応じて情報を検査できるようにする必要があります。
うまく工夫すれば、物流チェーンの他の部分で活用されている一種の例外ベースの報告が可能になるでしょう。たえずバックグラウンドの処理について船員に警告するのではなく、問題が起きたときだけ警告を発するようにシステムを設計することもできるでしょう。
ワークフローの設計改善も、オートメーションを促進する要因となりえます。ただし、アクセスを必要とする人には誰にでもデータを表示できるような、十分に優れたインターフェースが必要となります。また、臨機応変に分析できるよう、さらに多くのデータを場面ごとに応じて引き出せるようにする必要もあります。
船上でのことは、陸上についても当てはまります。チームを少人数化して作業量を増やし、顧客がいつでも連絡できるようにすることです。ときには会話や、場合によっては動画でのやり取りが必要になることもありますが、多くのやり取りは自動化することができ、担当者にアラートをプッシュ通知することで、テレワークもしやすくなります。
同じような先を見越した態勢は、データや書籍のリニューアルが近づいていることを知る必要がある場合に、陸上と船舶の両方にアラートを送るためにも利用できます。こうすることで、スケジュールよりも前もってコンプライアンスを管理できるようになります。
疑いの余地なく明らかなのは、大事故が起きた場合、技術に対する姿勢に及ぼす影響は甚大でありうるということです。ここ数週間、私たちは誰もが、自分の船舶がどこにあるのかを知っていると思いこむことと実際の状況のギャップによる恐るべき影響を、まざまざと見せつけられました。
自分の船舶が悪天候に向かって進んでいること、あるいは航行計画から逸脱したこと、あるいは通常よりも多くの燃料を消費していることを船主が事前に認識できるなら、いち早く警鐘を鳴らすことができます。