イエス・ウィー・キャン(そして皆さんもできる)
脱炭素化を真剣に考えているあらゆる船舶オーナーとオペレーターにとって、それを可能にするものとしてデジタル化を検討すること、そしてこの両者の関係を理解することが、ますます重要となっています。
航海の最適化のような取り組みをすれば、1航海あたり5~8%の燃料が節約され、それに対応してカーボンフットプリントも減少しうることが証明されており、これは脱炭素化の目標達成に向けた大きな前進となります。
デジタル化の必要性の前では尻込みしがちですが、これに立ちむかう効果的な方法もあります。コミットメントと投資が必要で、急速なプロセスではありませんが、比較的早く実感できる結果が得られ、事業に違いをもたらす可能性があります。
オペレーターは、短期・中期・長期的な目標を設定し、このプロセスを異なるレベルに割り振る必要があります。徹底的な変換のためには、段階的なアプローチが求められますが、しかし重要なのはスタートを切ることです。こうした大規模な変化は、一晩で実現され、すぐに投資への見返りが得られるようなものではありません。
短期的な優先事項は、利用可能な技術を用いて、現在の船舶において燃料消費量と炭素を削減する航行最適化によって、運航効率を改善することです。
次のステップは、フリートを監視することで、ベンチマーク設定や継続的なカーボンフットプリント削減対策を通じて、市場または規制の進んでいく範囲内で、どのように実績を維持するのかを理解することです。これにより、2030年以降の目標をどの船舶が達成でき、どの船舶が達成できできないのかという決定についての情報が得られ、フリート内での位置が決定されていきます。
典型的なアプローチとなるのは、事業プロセスをデジタル化し、陸上と船上のデータもデジタル化することで、正しい情報を適正な頻度と品質で収集し、分析を通じた知見が得られるようにすることです。
有意な収益を追求する場合、パイロットプロジェクトが決定的なプロセスとなります。革新の可能性のある他の産業と同様、新しい技術を採用するたびに、1~2隻の船舶でパイロットプロジェクトを実施することが鍵となります。この初期投資からオペレーターが利益を得ることができたら、コミットメントを増やし、フリート全体にスケールアップすることが理にかなっています。
これにより、限界利益が得られて、短期的な効率が生み出され、さらに先を見越した船舶管理が可能になります。良質なデータの着実な流れがあれば、さらに先進的な分析を行うことで、より多くの推奨事項を提供できるようになり、これは燃料消費量と炭素排出量の削減、安全な航路のナビゲーション、機器の不具合の予測、先を見越した決定に役立つ可能性があります。
オーナーが考えなければならない問題は、利用可能なデータの欠落がないことと、むしろ過負荷です。ここで重要となるのは、どのデータが価値があるのか、どれが正しい洞察をもたらし、適切な決断を下すことを可能にするのかを理解することです。
燃料消費量と炭素排出量が低下していれば、良い結果だということになります。しかし、時として、オーナーが全体像を見たがらないことや、メーカーやプラットフォームプロバイダーが所有しているために、必要なデータにアクセスできないこともあります。このことは、船舶データの通知と配布に関しても当てはまります。本当に門戸が開かれている場合もありますが、反対に、船舶の実績を分析する必要のあるオーナーがウォールド・ガーデン(壁に囲まれた庭)の中に置かれる場合もあります。
船員にとっても船舶オペレーターにとっても課題となるのは、海運業では伝統的に透明性よりも不透明性の方が好まれてきたという点です。証明できる実績よりも、非効率の方が報われることがあるのです。こうした障害は、デジタル化により、一挙にではなくても、少しずつ、しかし永遠に取り払われます。
ただし、ここでも変化が起きています。秘密と情報不足が主流となっているモデルから、AISを通じて船舶や船荷を追跡してマッピングし、船舶をフリート運航センターから管理しながら実績を評価・予測するようなプラットフォームのモデルへと、移行しつつあるからです。
デジタル化は競争だと捉えるのではなく、ソフトウェア、船級協会、コミュニケーション分野のプレーヤーが、スタートアップ企業や定評ある産業プレーヤーと協力し、それぞれ持ち寄れる価値を利用するようになっています。
これは、規制の問題だけではありません。2023年に新しいIMO燃費規制が発効する以前から、船舶オペレーターは他の方面から運航プロファイルを改善する圧力にさらされる可能性があります。たとえば、ポートフォリオの炭素強度を測定する船舶融資銀行からの圧力や、自社の顧客からの圧力が考えられます。
多くの主要な用船主は、スロースチーミングを通じて、あるいは新しい燃料の採用を通じて、すでに「ネット・ゼロ・カーボン」の意志を表明しています。こうした変化も、社会的圧力を反映したものです。とりわけ、企業が顧客に改善を証明しなければならない場合は、こうなります。
規制によって、あるいは自発的に、環境への適合が行われ始めていますが、オペレーターは安全で効率的な運航を証明する信頼できるデータを用船主に提示できることも必要となるでしょう。
さらに長期的には、代替燃料の採用の選択肢をめぐる決定をしなければならなくなるでしょう。この代替燃料は、過渡的な燃料であれ、長期的な選択肢であれ、所有または用船する船舶のタイプに応じた好ましいものとなるでしょう。しかし、これについては、また日を改めて議論しましょう。